知床窯の陶器 ご使用にあたって 留意点・楽しみ方


   ・陶器は生き物
    
   昨今、日本の食卓で使用されている食器は、残念ながら大半が
   
   陶器ではなく俗に「セトモノ」と呼ばれる量産品です。

   
   「セトモノ」は「磁器」に近くて、カチンカチンに固くて吸水性が無く、
   
   いくら使い込んでもほとんど外観に変化はありません。
   
    一方「陶器」は柔らかく、温かみのある素材で、
   
   その特性上、若干の吸水性があります。
   
   両者の違いはちょうど、
素材としての石と木のような違いです。
   
   今日、世界中で「陶器」の良さを理解できる民族は多くありません。
   
   歴史上、建築や工芸でも「木」や「陶器」の
暖かい手触り、経年による味わい
   
   を愛し続けた日本人ならではの美意識といえるでしょう。
   
   
・ここで、陶器を使い慣れない方のために強いて具体的な留意点を挙げてみます。
   
    
・初回、ご使用になる前には、きれいな冷水に5分ほど浸してください。
     窯から出した陶器はカラカラに乾燥していて、最初にある程度の水分を吸収します。
     また、数ヶ月も使わずに棚にしまっていた陶器も、できれば軽く水をくれてから使って下さい。
     自動食器洗浄器はできるだけ避けたほうが無難です。
    
    
・花入れ、一輪挿しについて。
     
     ごくまれに検品時に見過ごしたヒビ(焼き割れ)や、砂粒の抜けた穴から
     どんどん水が流れ出してくることがあります。その場合は知床窯にその状況をご連絡下さい。
     
     
    
・ぶつけると割れます。 
     当然の事ですが、強く当てると割れます。量産品のセトモノに比べると、陶器はやや衝撃に弱い
     ため、取り扱いには少し気配りが必要です。
     また、「粉引」の器でごくまれに、口縁部の釉薬がパラパラとはがれ落ちる物があります。
     製法上、まれにこのような現象がおきるのは避けられず、剥落が著しい場合は
     状況を知床窯までご連絡下さい。
     

   ここから再び陶器の特性についての話に戻ります。
   
   知床窯の中でも特に、「粉引」や「三島手」は、その柔らかい焼け上がりと肌合いが魅力ですが、
   
   その分吸水性も高めで、湯呑み、酒器等の
匂いに敏感な器は、それ専用にした方が良いでしょう。
   
   また、しばらく使っていると一番上の写真(知床窯・粉引湯呑み)のように、茶渋などで貫入(カンニュウ)に
   
   色が入ることがあります。知らない人が見るとただの「ヨゴレ」のように思われることがありますが、
   
   これは陶器に絶好の景色と風情を与える物で、言うなれば ジーンズの穿きジワや色落ち
   
   のようなもの、陶器ならではの
「使い込む楽しみ」です。
   
   
   何かとせわしい現代の日常の中で、せめてお茶やお酒、食事など、憩いのひと時を、
   
   使い込んでしっとりとなじんだ、あなただけの器で、ゆったりと楽しんで頂けたら・・
   
   陶器には西洋の彩色磁器のような華やかさはありません。でも陶器には手で感じる温もりと、
   
   飾らない、本当のくつろぎがあります。 遠く鎌倉の昔から、茶人が、そして多くの日本人が
   
   陶器を愛してやまないその理由を、一人でも多くの方に理解し、そして楽しんでいただけたら・・
   
   そんな思いでこれからも陶器を作って行きたいと思っております。
   
   これからもどうか末長く、知床窯をご愛用下さい。